旬の果物を使った季節ごとのお菓子作りはとても楽しい時間です。
焼きたてを味わえるのも家庭ならでは。このアプリコットのクーヘンもその一つです。
アーモンドパウダーたっぷりの生地に、火が入ってさらに酸味と甘みの増したアプリコットがジュワーっと馴染み、季節の実りを贅沢に味わえます。
焼き菓子やコンポートにする場合は固めのアプリコットを選びます。
縦の溝に沿ってクルっと一周ナイフを入れたら、両手で互い違いになるように実をねじって種を外します。
アプリコットの種を割った中にある核は、杏仁豆腐を作る際の杏仁霜や、アマレット(イタリアのリキュール)の材料として使われています。
ただし、この種はとても硬いので家庭で割ることは難しいようです。
1/4にカットしたアプリコットを粉砂糖とラム酒をまぶし、生地の上に並べます。
焼くとアプリコットが縮むので、隙間なく並べるのが綺麗に仕上げるポイント。
アマレットではなくラム酒を使うのは、アマレットの香りが強く、せっかくの生のアプリコットの繊細な香りを隠してしまうからです。
ラム酒がなければブランデーが良いように思います。
アプリコットは火を入れると酸味が増します。とても酸っぱいので、お菓子作りには普通はコンポートにしたものを使います。
このアプリコットのクーヘンは生のままのアプリコットを使用していますが、アーモンドパウダーをたっぷり入れた甘めの生地に焼き込んでいるので、その酸っぱさがアクセントとしてとても美味しいように思います。
なんと言っても焼きがてが一番ですが、冷やしてしっとりと馴染んだものもおすすめです。アイスクリームを添えて初夏の贅沢なデザートにどうぞ。
コンポートにしたアプリコットを生地にのせて焼いたシンプルなパイです。
生地は綺麗に整えず余白を折って、中にはサワークリームのさっぱりしたフィリングを合わせました。
アプリコットの旬は初夏。暑い季節のお菓子はさっと作れるものが良いですね。
シンプルだからこそ、アプリコットの味わいが引き立ちます。
生のアプリコットは味が浅く、食感もそれほどよくありません。
しかし火を入れた途端、酸味と甘みが増して色鮮やかにとても美味しくなります。
傷みやすい果物なので、手に入れたらすぐにジャムやコンポートにすると日持ちがします。
コンポートは砂糖と水を沸騰させたシロップにアプリコットを入れてごく弱火で5分煮ます。鍋に入れたまま冷ませば出来上がりです。
あまり長く煮たり、強火でグラグラ煮ると実が崩れてしまいます。しっかりと固めの仕上がりの方がお菓子にも使いやすいです。
お菓子に使った残りのコンポートはソルベがおすすめです。
残った実を適当な大きさにカットし、シロップごと冷凍庫へ。半分くらい固まったら混ぜて空気を入れます。そのまま冷やし固めれば出来上がり。
夏の暑い時期にストックしておきたい甘酸っぱいデザートです。
アプリコット(杏)の旬は6月末から7月半ばととても短く、また日本では生産量も少ないのでなかなか出回りません。
生産地は長野と青森が最も多く、ほとんどが加工品となってしまうようです。6月初旬は小ぶりの「平和」、7月に入ると大粒の「信州大実」に移行していきます。その他に「昭和」や「新潟大実」が流通しているようです。
ほとんどの品種が酸味が強いので加工品に向いていますが、酸味の少ない「ハーコット」は生でも楽しめる数少ない品種です。
生のものはなかなか手に入らないからこそ、手に入れてお菓子を作る楽しさは格別です。